2010年11月18日
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魔法先生ネギま!(32) (少年マガジンコミックス), 赤松 健, 講談社

Written By: 川俣 晶連絡先

「世の中にはやはり奇跡ってのはあるものだね」

「どういうこと?」

「ネギまってのはさ。31巻でまあはっきり言って見限ったわけだ。質が酷く落ちた」

「そうなの?」

「行きがかり上、最後は見届けたいと思うのでコミックは買うが、まあそれだけの話だと思っていた」

「うん」

「ところが、見事に32巻で立て直してきた」

「へぇ」

「ちょっと立派かなと思っても、ちやほやされるとすぐ堕落する人ってのは、ずいぶん見てきたよ」

「それは辛辣だね」

「そういう人は褒めて欲しいだけだから、褒めてくれる取り巻きに囲まれると本人はどんどんダメになっていく。しかも、抜け出せない蟻地獄なんだ」

「それがよくあるパターンってことだね」

「厳しい言葉で批判したってダメさ。だって、そういう言葉がたまにあっても、大多数は甘やかしの言葉なんだからね」

「そうか。どんな批判もすぐ打ち消されてしまうわけだね」

「だから、その蟻地獄に落ちていないのはかなり凄いことだと思うよ。本来は当たり前のことなんだけどね」

これはダメかと思った §

「イノセンテイセスのコミックの時にも批判したけどさ。等身を変える表現ってのは基本的に安易すぎてダメなんだ。軽井沢シンドロームは大胆な表現として使っているからそれは許されるが、不必要なシーンで安易に等身がコロコロ変わっても読む側が戸惑うだけだ」

「チビキャラはNGってことだね」

「強い意味づけがない場合はね。単なる作者の甘えでしかない」

「それで?」

「実はページをめくってびっくりした」

「というと?」

「これから突入すべき場所のスケール感のあるリアルな絵の続きに、チビキャラで模式的に説明された説明図が出てきて、ここはダメかもと思った。32巻でよく立て直したけど、ここは不発かもと思った」

「そうか。行けてない部分もあるわけだね」

「だけど、よく読んだら違った。これは反語表現なんだ」

「ええっ?」

「だからさ。僕らの計画はこんなに簡単で分かりやすいよ。という説明図なのだが、その簡単さが嘘くさくて、実際は不安を感じている人もいるという表現なんだよ」

「ということは?」

「だから、これはそこに使用される必然性がある表現で、なおかつ、甘い表現は甘さの偽装という表現に組み込まれているわけだ」

「なるほど」

扉絵の問題 §

「おいらのポリシーとして、酔える良い扉絵のあるコミックはいいコミックだという根拠のない思い込みがある」

「うん」

「最近で言うと、逢魔が刻動物園とかが該当する」

「それで?」

「31巻は実は各章の独立した扉絵が1枚もない」

「なるほど。その点で、良いコミックの条件を満たさないわけだね」

「根拠はないけどな」

「それで?」

「32巻は読み始めていきなり最初から、どーんと来ましたよ。そこに居る全員集合の扉絵が」

「ほほう」

「しかも、ネギパーティーじゃない人も混ざっているし、それだけの人数が揃うロングの絵でもなおでかいパル様号がバックに控えているし、文句は無いじゃない?」

「そうか、そこでも予感みたいなものがあったわけだね」

「うん。この32巻は行ける。そういう手応えを感じた」

「裏切られなかったわけだね」

「そのあとですぐエヴァに氷漬けにされるネギの絵を見て思ったよ。どうやら当たりを引いたらしい」

パンチラの問題 §

「実は、31巻の問題として無駄に下着を見せすぎるという面がある。あと胸ね」

「身体を捻ってスカートの中を見せつつ胸も見せる訳ね」

「それでいて顔も見せる」

「かなり無理のあるポーズになるね」

「でもそれがオタクの定番ポーズだ」

「それで?」

「実は32巻になって、ほとんど下着が出なくなった」

「ええっ?」

「月詠とか、見えまくってもおかしくないのに、ここぞという場面しか見えない」

「へー」

ザジの問題 §

「ザジ出ちゃったよ」

「ははは」

「これはいい引きだね」

「次の巻も読みたいと思わせるね」

「フェイトとネギの関係がラブラブ化している今、緊張感を出すには別の何かを出す必要がある。そういう意味で、まさにベストの登場タイミングだと思う」

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